不動産の価格とは?-遺産分割協議における疑問(その1)-

 こんにちは。今回から何回かに分けて、遺産分割協議を行う際に生じる疑問点についてお話ししたいと思います。

 

 相続人間で行う遺産分割協議の中で、相続する土地や建物といった不動産の価格について、何を基準にしたらよいのだろう?と迷ってしまうことがあるかと思います。実際、そのようなご質問・相談を受けたことは何度もあります。

 

 現金や預貯金は、その額がはっきりしているのでよいのですが、不動産の価格については、目的に応じていくつもの評価方法が存在しています。遺産分割協議において、どの評価方法に基づく不動産の価格を採用するかによって、ご自分の取り分が変わってくることもありますので、無視できない問題です。

 

 以下、代表的な不動産の価格をお示しします。

 

<代表的な不動産の価格>

1.実勢価格(取引価格・時価)

2.公示地価(基準地価)

3.相続税路線価

4.固定資産税評価額

5.不動産鑑定士の鑑定評価額 

 

 違いはよく分からないけれど言葉自体は聞いたことがあるという方は多いかと思います結論を言ってしまうと、遺産分割協議にあたっては「どの価格を基準にしても構わない」ということです。法律でこの基準を使ってくださいとするルールはありません。相続人の皆さんが納得できるものであればどれを選んでもよいのです。

 

 ということで今日はこれでおしまいです( ^^)   では何の芸もないので、それぞれの価格について少し解説します。※なお、建物の価格については、固定資産税評価額を用いるケースが大半を占めていると思われますので、これ以降は「土地」の価格に絞って話を進めます。

 

<各価格の特徴等>

1.実勢価格(取引価格・時価)

 実際に売買等の取引をする際の価格です。遺産分割後、相続した土地を売却して現金に換えるのだから、この価格が遺産分割協議の際の基準としてふさわしいとの見解が多いのですが、やや疑問符も付きます。なぜなら、この価格は不動産業者の査定によるのが通常ですが、査定する業者によって差異が生じる可能性があるからです。複数の業者に査定を依頼しその平均をとる等の方法も考えられますが、相続人の全員が査定結果に納得できるかは簡単ではないかもしれません。なお、過去の取引事例を調べることができる国土交通省のサイトがありますが(下でリンクを貼っておきます)、地方のあまり不動産の取引が活発でない地域においては、事例が乏しくあまり参考になりません。なお、公示地価(基準地価)を1とした場合の実勢価格は1.1程度です。

 

2.公示地価(基準地価)

 一般的な土地の売買や公共事業での行政側の取得価格の目安として算定されたものです。公示地価は国の調査によるもの、基準地価は都道府県の調査によるものですが、算定目的は同じです。公的な指標なので、相続人間の不公平感は1の実勢価格を採用した場合よりも小さくできるかもしれません。ただ、調査対象とされた土地(公示地価の場合は「標準地」、基準地価の場合は「基準地」)が相続対象の土地の条件と異なるケースでは、必ずしも適切な基準にならないでしょう。

 

3.相続税路線価 

 相続税・贈与税を算定するための基準で、国税庁が定めています。土地に面している路線(道路)ごとに1㎡当たりの単価が設定されており、この単価に土地の面積を乗じたものがその土地の価格になります。公的な指標であることと相続に関連するものであること、さらに、道路ごとに個別の単価が設定されている(土地によっては、固定資産税評価額に例えば1.1等の倍率を乗じて算定される地域もあります)ことから、遺産分割協議の際に用いる基準としては、わりとフィットするのではないかというのが、私の経験からくる印象です。また、国税庁のホームページで簡単に調べることもできます(下でリンクを貼っておきます)。なお、公示地価(基準地価)を1とした場合の路線価に基づく価格は0.8程度です。

 

4.固定資産税評価額 

 固定資産税を算定するための評価額で、市町村が決定しています。土地ごとにはっきりとした価格が出ていますので(納税義務者に評価額が通知されています)、分かりやすいです。ただ、公示地価(基準地価)を1とした場合の固定資産税評価額は0.7程度ですので、基準としてはいくぶん低いかなという感じはあります。

 

5.不動産鑑定士の鑑定評価額 

 地方のあまり高くない土地の評価のためにわざわざ不動産鑑定士に依頼するケースは決して多くないとは思いますが、詳細な分析のうえに算定された評価額を望む相続人にとっては最良の方法です。特に、特殊な条件を有する土地の場合は、標準的な評価に基づく価格はあまり参考にならないため、不動産鑑定士の活用も有効だと思います。もちろんそれなりの費用はかかりますが。

 

 以上、それぞれの評価方法に基づく不動産の価格についてその特徴等を簡単にご紹介しました。不動産の価格(価値)は、多分に主観的な要素を含んでおり、遺産分割協議に参加する相続人全員が全く異議なく納得できる基準というのは無いに等しいかもしれません。ある程度の妥協・譲歩は致し方ないでしょうね。

 

 不動産の価格という一義的に決定し難いものをテーマとしたため、私見を含む記事になっておりますが、少しでも参考になれば幸いです。 

 

※不動産の価格を知るために参考となるサイトをご紹介します。

 

取引価格、公示地価(基準地価)を調べたい方は、

→土地総合情報システム(国土交通省のホームページ)

 

相続税が気になる方は、

→路線価図・評価倍率表(国税庁のホームページ)