相続を放棄するとはどういうこと?

 こんにちは。今日は、相続に関するご相談を受ける中でたまにお聞きする勘違いについてお話ししたいと思います。

 

 最近、「相続放棄」に関するご相談が増えてきているような気がします。最高裁司法統計等の数字にもそれが表れています。ただ、正直なところ、放棄の意味について少々誤解されている部分があるように思います。

 

 そもそも論ですが、相続とは、相続人が、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条本文)ことです。権利だけではなく、借金等の義務(≒債務、負債)も承継することは皆様よくご存じのところです。そして、借金等のマイナスの財産が、預貯金・不動産等のプラスの財産を上回ってしまうとき、「相続を放棄する!」というニーズが発生します。※地方においては、山林や原野等の利用価値の低い不動産は、現実にはプラスの財産とは言えないケースも多いかもしれませけどね( ^^;)  このテーマについてはまたいずれこのブログでとり上げます。

 

 さて、最も多い誤解のひとつは、「私は、遺産分割協議で何も遺産をもらわないことになった。だから、当然借金も負う必要がない。相続は放棄したんだ。」というものです。残念ながら、それは相続放棄とはいいません。依然として借金を負う可能性は残ったままです。上記のケースでは、あくまで「プラスの財産をもらわない」ということが決められただけで、マイナスの財産を誰が負担するかなんて、決められていないのです。じゃあ、プラスの財産をもらう相続人がマイナスの財産も引き継ぐと決めれば、それで一件落着じゃないかとお考えになるかもしれません。それも正しい理解ではありません。マイナスの財産の負担者を決めても、債権者側には何の関係もないのです。このような取り決めをしたとしても、債権者は平然と相続人の全員に対して、借金の支払いを請求できます。債権者にとっては、相続人同士の協議の内容を知りえないし、勝手に債務の負担者を決められても困るからです。

 

 じゃあ、相続放棄って、どうすればよいのでしょう? 

 

 ホンモノの相続放棄とは、正確には、こういう行為のことを指します。「相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述する(民法938条)」ことです。実際の行為は、「相続放棄申述書」というものを戸籍謄本等の必要書類とともにその案件を管轄する家庭裁判所に提出します。しかも、この申述書の提出には期限が決められており、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から(原則)三か月以内にしなければなりません。そして、無事、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民法939条)という、皆様ご所望の効果が発生します。

 

 このように、その相続に関しては、「一瞬たりとも相続人であることはなかった」という効果が発生するのが、相続放棄です。よって、マイナスの財産を引き継ぐことはあり得ないし、その反面、プラスの財産もまったくもらえません(ちょっとでももらってしまうと、上記の法定期間内でも、もはや相続放棄の手続きができなくなるのでご注意ください)。

 ちなみに、相続を放棄しても、これまでの親子関係すらまったくなかったことになる、などということにはなりませんから、ご安心ください。あくまでも、その相続の問題(財産関係)についてのみ生じる効果です。

 

 今日は、このあたりにしておきましょう。相続放棄については、関連事項を含めて、まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。それは、またの機会に。

 

 ここまでお読みくださりありがとうございました。